Webサイト制作で要件定義をすることになりました。どのようなことを決めればよいでしょうか?
Webサイト制作における要件定義の工程は非常に重要です。ポイントを紹介しますね。
こんな人におすすめ
- Webディレクターで要件定義を初めてすることになった人
- 他ではどのような要件定義を作成しているのか知りたい人
わたしはWeb業界で20数年、働いているモノコト(@monokoto68)です。
これまで様々なWebサイト制作に携わってきました。
そんな現役Webディレクターが実際に行っているWebサイト制作の要件定義について紹介します。
Webサイト制作において、要件定義は最も重要な作業の一つです。
要件定義を怠ると、後々のトラブルや予算のオーバーなど様々な問題が発生します。
この記事では、Webサイト制作における要件定義の重要性やポイントを詳しく解説します。
Webサイト制作における要件定義の重要性
Webサイト制作において要件定義はどのような意味をもつのでしょうか?
要件定義の重要性
- 顧客ニーズを正確に捉えるため
- スケジュールや予算を把握するため
- プロジェクトの進行を円滑にするため
- クライアントとの信頼関係を築くため
それぞれ解説します。
顧客ニーズを正確に捉えるため
要件定義は、クライアントの希望や要望を正確に把握するために行われます。
この工程で、クライアントが求める目的や機能、デザインを把握し、それを実現するための戦略やプランを立てます。
要件定義を行わなかった場合、クライアントの要望を十分に理解せず、後々、「こんな機能があると思っていた」「それは予算に入っていると思っていた」など問題が生じる可能性があります。
スケジュールや予算を把握するため
要件定義は、スケジュールや予算の見積もりにも大きな影響を与えます。
具体的に必要な機能やページ数、デザインなどを明確にし、それに必要な時間やコストを計算するためにも要件定義は必要です。
要件定義を怠ると、スケジュールや予算が把握できず、進捗が遅れたり、コストオーバーになる可能性があります。
プロジェクトの進行を円滑にするため
要件定義を明確にしておくことで、プロジェクトの進行を円滑にすることができます。
開発者やデザイナーがどのようなものを作ればよいか明確になり、不必要なコミュニケーションの手間やミスが減ります。
クライアントとの意識合わせもでき、同じ方向を向いてプロジェクトを進めることができます。
クライアントとの信頼関係を築くため
要件定義は、クライアントとの信頼関係を築くためにも非常に重要です。
クライアントの要望をしっかりと汲み取り、それを実現することで、クライアントの期待に応えることができます。
要件定義で目的を明確にして、Webサイト構築後には目的を達成することで、クライアントの満足度も高まります。
この工程を丁寧に行うことで、クライアントとの信頼関係を深めることができます。
Webサイト制作における「要件定義書」の内容
要件定義書に何を書いたらいいのでしょうか?教えてほしいです。
要件定義書で決めておくべき項目を紹介しますね。
要件定義書の内容
- コンセプト
- 目的
- ターゲット
- 対応範囲
- 対応言語
- コンテンツ要件
- 機能要件
- システム要件
- サーバー要件
- セキュリティ要件
- 概算スケジュール
- 体制図
- 納品物
- 運用・保守
それぞれ説明します。
1.コンセプト
Webサイト制作におけるコンセプトを定義しておきます。
プロジェクトに関わるメンバーがコンセプトを共有しておくことで、進むべき方向を間違えないようにするためにも必要です。
2.目的
なんのためにWebサイトを制作するのか、目的を明確にします。
目的なくして、Webサイトを制作する意味はありません。
目的を要件定義書で明記しておくことが重要です。
3.ターゲット
Webサイトはどんな人に向けて制作するのかターゲットを明確にしておきます。
ターゲットをはっきり決めておかないと、Webサイトのデザインやコンテンツ内容にブレが生じます。
要件定義書にターゲットを記載しておきましょう。
4.対応範囲
今回のプロジェクトにおいて、対応範囲はどこまでなのかを要件定義書に明記しておきましょう。
例えば、コーポレートサイトのリニューアルであれば、現状どのサイトが対象なのかを明記します。
「採用サイトも対象範囲だと思っていた」など、あとで認識の齟齬がないようにクライアントと対象範囲のすり合わせをしておきましょう。
5.対応言語
今回のWebサイト制作は、日本語だけでよいのか、英語、中国語などの多言語対応は必要なのか、認識の違いが出ないように要件定義書に明記しておきましょう。
6.コンテンツ要件
コンテンツ要件を固めるために以下の資料を用意しましょう。
- サイトマップ
- ディレクトリマップ
- 素材・原稿リスト
Webサイトは何ページ構成になるのか、どんなコンテンツが必要か、全体のボリュームを把握するためにも上記資料を作成しましょう。
また、写真素材や原稿は、クライアントが用意するのか、制作会社の撮影、取材を行うのかなど、決めておきましょう。
撮影や取材が必要な場合は、パートナー会社に依頼することもあるため、スケジュールや予算に影響するため、要件定義でしっかり決めておきましょう。
7.機能要件
システム要件がある場合は、どんな機能が必要か、洗い出して決めておく必要があります。
できるだけ具体的に仕様を決めておくことをおすすめします。
最初の段階では、なかなか詳細まで詰め切ることは難しいですが、どのような機能が必要かリストアップし、要件定義書にまとめておくことで、後々の機能追加が発生した際に追加見積もりが可能になります。
8.システム要件
システム実装する上での要件を固めておくことが必要です。
例えば、ライブラリのバージョン要件など、あらかじめ確認しておきましょう。
9.サーバー要件
Webサイトを公開するサーバーの要件を決めておきましょう。
現在のサーバーをそのまま利用するのか、新しくサーバーを借りるのか、使用するサーバーのPHPバージョンや容量など、サーバーに関する要件を固めておきましょう。
本番サーバーにWebサイトをアップしてみたら、バージョンの関係で動かないなどトラブルにならないように早い段階でサーバー要件を共有しておきましょう。
10.セキュリティ要件
セキュリティをどこまで考慮した構築にするのか、要件定義で決めておきましょう。
Webサイト完成後に脆弱性診断を行う必要があるなど、セキュリティに関して要件を固めておきましょう。
構築段階からセキュリティレベルに応じた実装が必要になるため、重要な項目になります。
11.概算スケジュール
Webサイトの全体的なコンテンツボリュームや実装機能が明確にしたあと、公開までのスケジュールを要件定義書に記載しましょう。
クライアント要望で、公開日がマストの場合もあるため、スケジュールについて協議の上、決めておきましょう。
12.体制図
Webサイト制作プロジェクトのメンバーを要件定義書に記載しておきます。
プロジェクトの責任者や制作スタッフなど、どのような体制で進行するのか明確にしておきます。
13.納品物
プロジェクト完了後に何を納品物とするのかを要件定義書に明記しておきます。
最初に決めておかないと、あとから資料を準備するのは大変な作業になります。
例えば納品物には以下のようなものがあります。
- HTMLデータ
- 要件定義書
- サイトマップ
- ディレクトリマップ
- システム仕様書
- テスト仕様書
- 議事録
- 操作マニュアル
あらかじめ納品物をクライアントと決めておくことが必要です。
14.運用・保守
Webサイト公開後の運用・保守はどのように行うのか、クライアントと協議しておきましょう。
運用・保守契約を結んで、更新作業を引き続き行う場合は、どのくらいの作業と費用で何を行うのかを話し合っておく必要があります。
公開前に、運用・保守の話をすることで、公開後もスムーズにWebサイト運営を行うことができます。
以上のように要件定義において、必要事項をクライアントと協議の上、まとめておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
今回のプロジェクトで何を実施して、何を実施しないのか、範囲を明確にすることが重要です。
要件定義のよくある失敗例
要件定義を行う上でどのような失敗例があるのでしょうか?
よくある失敗例として、「要件不足」「要件の曖昧さ」「要件の変更」があります。それぞれ説明します。
失敗例:要件不足
要件不足は、システム開発のプロジェクトでよくある失敗の一つです。
要件定義の段階で、実際に必要な機能や仕様を把握しきれずに不足してしまうことを指します。
これにより、開発途中で機能の追加や仕様変更が発生したり、開発期間の遅延やコスト増大につながることがあります。
要件定義を正確に行うことが、プロジェクトの成功につながる重要なポイントです。
失敗例:要件の曖昧さ
要件の曖昧さとは、要件定義の段階で明確な定義や説明がなく、どのように実現するかが不明瞭な状態を指します。
例えば、新規登録機能がある場合、どのような情報を入力する必要があるのか、誰が使うのか、公開までにどのようなフローが必要なのかなど、具体的な要件が定められていない場合があります。
このような曖昧な要件があると、一言で登録機能といっても、要件によっては開発工数が膨大になる可能性もあります。
要件はできるだけ具体的に決めておくことが重要です。
失敗例:要件の変更
よくある要件定義の失敗例で「要件の変更」は、プロジェクトが進行中に要件が何度も変更されることを指します。
これは、初めに定義された要件が不十分だったり、プロジェクトのスコープが明確でなかったり、顧客が自分たちのニーズを正確に把握できていなかったりすることが原因となります。
要件の変更は、プロジェクトに多大な影響を与える可能性があります。
スケジュールや予算の拡大、品質の低下、チームのモチベーション低下などが起こり得ます。
要件の変更を防ぐためには、最初に十分な調査を行い、プロジェクトのスコープと目標を明確に定義することが重要です。
プロジェクトの進捗状況を定期的に報告し、必要に応じて要件の再検討を行うことも重要です。
初期段階において、要件定義ですべてを決めきることはできない
プロジェクトが始まったばかりの初期段階において、要件を詰めていくわけですが、詳細にすべてを決めきることはできません。
プロジェクトが進むにつれて、詳細な要件が固まっていくこともありますし、変更になることもあります。
それでも初期段階での要件を固めておくことは重要です。
大枠の要件をクライアントと握っておくことで、後々の追加要望や変更があった場合に、スケジュール変更や追加見積もりの相談がしやすくなります。
できるだけ初期段階で要件を詳細に決めておきたいですが、すべてを決めきることはできないと理解しておきましょう。
まとめ:Webサイト制作での要件定義の内容とよくある失敗例
Webサイト制作における要件定義書の内容とよくある失敗例は以下の通りです。
要件定義書の内容
- コンセプト
- 目的
- ターゲット
- 対応範囲
- 対応言語
- コンテンツ要件
- 機能要件
- システム要件
- サーバー要件
- セキュリティ要件
- 概算スケジュール
- 体制図
- 納品物
- 運用・保守
よくある失敗例
- 要件不足
- 要件の曖昧さ
- 要件の変更
Webサイト制作において、要件定義は最も重要な作業の一つです。
要件定義を怠ると、後々のトラブルや予算のオーバーなど様々な問題が発生します。
要件定義には時間の許す限り、しっかりじっくりと議論の上、固めていきましょう。